河や海を渡ろうとする時、ちょうど運よく船があるように何かをしようとする時や困っている時に折よく好都合なものがそろうと、このような表現をします。これは『法華経』の「薬王菩薩本事品」の「此の経は能く一切衆生を救いたもう者なり・・・子の母を得たるが如く、渡に船を得たるが如く・・・此の法華経も亦腹是の如し」が出典で『法華経』の功徳のすばらしさを巧みに説き示した有名な一説です。橋のない時代の渡し船は本当に有り難いものでした。迷える人々を救う『法華経』は、まさに渡し船のような教えです。私たちも日常生活の中で悩み苦しんでいる人の渡し船となりたいものです。

佼成出版社「The Yakushin」1993年2月号・暮らしの中の仏教より