このことわざは、ほんの片隅でも一つ一つの明かりが懸命に照らせば全体が明るくなっていくように、一人一人が自分に応じた役割を果たしていけば、それが全体の発展につながるという意味です。この言葉は天台宗の祖師・伝教大師が著された『山家学生式』の一節にある「一隅を照らす、此れ則ち国宝なり」という言葉からきています。ここで国宝とは、職種や身分の上下にかかわらず、どんな立場にあってもなすべき仕事を誠心誠意行い、世に尽くせる人のことです。一人の力は小さな力(灯)にすぎませんが、みんなが力を合わせれば世界全体を明るくすることができるのです。

佼成出版社「The Yakushin」1993年2月号・暮らしの中の仏教より