他生とは、今生でない前生、来世のことを指します。見知らぬ人と袖がふれあうようなささいなことでも、偶然ではなく深い縁によって起こるのだということわざです。「袖にする」「袖を振る」というのは、古くは愛情を示す身振りで、別れを惜しむときの仕草でした。何度も生まれ変わっては別れ、別れては生まれ変わる中で縁を結んだ仲なのだから大事にしていきましょう、という意味が込められています。いずれにしても和服時代の名残の言葉ですが、洋服を着るようになった現代、袖はなくても“心のふれあい”だけは大切にしていきたいものです。

佼成出版社「The Yakushin」1993年2月号・暮らしの中の仏教より